「ボッチプレイヤーの冒険 〜最強みたいだけど、意味無いよなぁ〜」
第58話
領主の館訪問編
<領主との接見 2>
カロッサ邸の2階にある領主執務室。
会見場所として用意されたこの部屋には会議室が併設されており、本来の予定では軽い挨拶の後、そちらに移動して話し合いが行われるはずだった。しかし、ただ出迎えるだけのはずの執務室でカロッサ子爵が暴走をしてしまったので、アルフィンたちは未だこの部屋に留まったままであった。
私は今途方にくれている。と言うのも、私の目の前には未だ最敬礼の姿勢を崩そうとしないカロッサ子爵と、その横で傅いているリュハネンと言う子爵家の筆頭騎士がいるからなのよね。
「領主様。何時までもそのような姿勢で居られては私も、困ってしまいます。頭を御上げになってください」
「アルフィン様! 私如き者に様など御付けにならなくても。どうぞ犬とでも呼んで下さい」
私の言葉に反応して頭は下げたまま顔だけを少し上げて、こちらに向けて話す領主。
もう! 私の事は他国の支配者として扱ってほしいと言っているのに、なぜここまで頑ななのよ。それに犬って・・・いやいや、それは流石に無理だから。と言うか、その期待に満ちた表情は何? 絶対呼ばないからね! それに後ろで控えている騎士さんも、この「犬と呼んで」発言を聞いて唖然とした顔で固まったまま領主を見ているし。ここで私がもし本当に犬呼ばわりなんかしたら私まで奇異の目で見られてしまうじゃないの。
「それはちょっと・・・。では領主殿?」
「犬はダメですか。(小声で『残念です』)でしたら敬称はいりません。カロッサと呼び捨てにしてくださって結構です! いえ、是非呼び捨てにしてください!」
目の前のこの人は、私に犬と呼ばれるのを断られて落胆の表情をする。しかし、すぐに立ち直り、今度は呼び捨てにして欲しいと言ってきた。それも是非にと期待をこめた目で。
まったく、是非と言われても呼び捨ては流石に出来る訳がないでしょう。だって相手はこの国の貴族なのよ。いくら乞われたからと言っても何も敬称を付けないで呼ぶ訳には行かない。それにあんな期待を込めた目で懇願されてはなおさらだ。
それに、なんか私、支配者とは別の意味の女王様扱いされているような気がするんだけど・・・いや、流石にそんなはずは無いわよね。だってこの人は私の事を女神様だと思っているはずだから。
でもなぁ、このままだと何時までたっても話が進まないし・・・うん、仕方ないか。
「解りました。様も殿も御断りになられるのでしたら、カロッサさんでいかがでしょう? 流石に私も年上の方を呼び捨てにするのは気が引けますから」
「そうですか。アルフィン様がそこまで仰られるのでしたら恐れ多い事ではありますが、これからは私の事を『カロッサさん』と、さん付けで御呼び下さい」
とりあえずこの辺りがお互い妥協できる限界かな? と考えての提案だったけど、幸い領主は、カロッサさんはこの提案を受け入れてくれた。その時、心底残念そうな表情をしていたのが少し気にはなるけどね。
でもよかったぁ、これでさん付けまでダメと言われたら本当に困ってしまう所だったからね。これはこれで後々問題が出て来そうな気がしないでも無いけど、今はまぁこれで良しとしましょう。
そのようなやり取りをしている間に、後ろで固まっていた騎士さんも再起動したみたいね。
私たちの会話が一段落着いたのを確認して傅いていた姿勢から立ち上がって領主の横に立つ。そしてその行動によって場の注意を引き、私たちの目が騎士さんの方に向いたのを確認してから一礼をして、
「アルフィン姫様。子爵の呼び方が決まったところで、会見場所に移動したいと思うのですが宜しいでしょうか?」
彼は部屋の中にある両開きの扉の方に右手を向け、こう私に声をかけてきた。
なるほど。入った時からこの部屋にはカロッサさんの執務机があるだけで、応接セットどころか私たちが座る椅子さえないから会見場所としてはちょっと変だなぁと思っていたけど、あの扉の向こうが本来の会見場所として用意された部屋なのね。
先ほどからの疑問に明確な答えが出てすっきりした私は、彼に向けて微笑みながら了承する。
「ええ、お願いします」
「ではこちらへ」
彼がそう言うと、それを合図として会見部屋の中で控えていたメイド二人がその両方の扉を中に向かって開いた。
今の声で扉を開いたと言う事はこのメイドさんたち、ここまでの会話が全て聞こえていたと言う事よね。
・・・大丈夫なのかしら?
これからの子爵邸の事を考えると少し不安になる。先ほどの私への「犬と呼んでほしい」発言を聞いても、これからも変わらずカロッサさんに仕えてくれるのだろうか? とね。でもそんな私の心配をよそに、何事も無かったかのようにメイドさんたちが私たちを迎え入れてくれた。
もしかして慣れてるとか?
そんなあまり考えたくない可能性を頭の端から追い出して部屋に入ると、メイドさんの案内で予め決められていたであろう席に私を中心にしてシャイナ、そして書記官として帯同しているカルロッテさんが着く。そして私の後ろにはギャリソンが立ち、最後列に紅薔薇隊の4人が並んだ。それに対してホスト側はと言うと私の対面にカロッサさんが座り、その後ろに筆頭騎士さんが立つ事により会見の準備が出来上がった。前振りが長くなってしまったが、。これでようやく本題である領主との会見が始まるのだ。
いよいよね。メルヴァたち相手にリハーサルはしっかりとしてきたからきっと大丈夫だとは思うけど、本番では何が起こるか解らない。実際これまでも予想外の事ばかりだった物ね。ここからの会話には今まで以上に細心の注意を払って、間違ってボロを出さないように気をつけなければいけないわ。
そう気を引き締め直した私は、残念ながら出鼻を挫かれる事となる。まぁ今回のはこれまでと違って、ある意味自業自得の理由だから仕方がないんだけどね。
「さて、それでは都市国家イングウェンザーの皆様とカロッサ子爵の会見を始めたいと思うのですが、その前に。失礼ですがアルフィン姫様。私どもはあなた様の御名前をファーストネームのアルフィン様としか知らされておりません。もし失礼にならないようでしたらフルネームを御教え頂けないでしょうか?」
いけないいけない、本来は館に着いたら出迎えの人にこちらから真っ先に伝えると言う話になっていた事だけど、色々と衝撃的な事が多すぎてすっかり忘れていたわ。前もって打ち合わせまでしておいた内容なのに、我ながら呆れ返る迂闊さよね。
「ああ、そう言えば伝えていませんでしたね。この国では珍しい事のようですが、私には苗字にあたるものがありません。アルフィンというのが私のフルネームです」
この私の言葉に驚きの表情を浮かべる領主たち。
それはそうよ、普通は苗字の無い人物など居る筈が無いもの。でも私のこの名前はゲームの時のだから本当にアルフィンと言う名前だけが全て、フルネームなのよね。
この世界に転移した当時、これから色々な人と出会う事になるだろうし流石にこのままではちょっと不味いのでは? とも思って仮にでも苗字を考えてつけようかと言う話が、私たちの間でも出た事はあるのよ。でもねぇ、それは自キャラたちと話し合ってやっぱりやめようって事になったの。
もし仮の苗字を付けた場合、普通はそちらで呼ばれるようになると思うのよ。だって、よほど親しくなりでもしない限りは普通、相手をファーストネームで呼ぶ事はないからね。けどそうなると、この世界で出会うであろう人たちからはずっと仮初めの名前で呼ばれる事になってしまう。
これがアルフィンにだけ入っているのなら多分、それでも特に問題は起こらないと思う。それくらいなら私でも対応できるだろうからね。でも、他の自キャラたちに入っている時にそのキャラの仮初めの苗字で呼ばれたら? 気を張っている内は大丈夫かもしれない。でも、いつかきっと気付かずに大きなへまをする日が来るんじゃないかなぁ? 流石に6キャラ分全ての苗字に対応できる自信がないからね。
「リュハネン殿、私からアルフィン様の今の御言葉の補足をさせて頂きたいと思います。我が国では最高位の方々は全員、名前しかございません。これはその御方々が唯一無二の存在であらせられるからです。そして我が国には名前だけしか持たない至高の方々は6人しかいらっしゃらず、その中でもアルフィン様がその最高位の支配者と言う立場に就いておいでになり、その元に集う5人の貴族の方々が名前だけを持つ至高の存在として私たちの上に君臨なされていらっしゃるのです」
と言う訳で、ギャリソンが今説明した設定を作ったの。統括のメルヴァやギャリソンもちゃんとフルネームがあるし、まるっきり嘘だと言う訳ではないからボロが出る心配も無いしね。
「なるほどそうでしたか。しかしそうなりますとアルフィン姫様、あなた様がこの国のいらっしゃると言う事は、今、都市国家イングウェンザー本国の運営はどのようになされているのですか?」
やっぱりこの質問が来たか。そうだよね、今の話からすると私は王の娘ではなく本当に支配者と言う事になる。となると王自らがこの国に来ていると言う事になるから、それならば本国はどうなっているのか? と言うのは当然出る疑問だろう。
と言う訳で、この質問も想定内だから問題なし。
「名前だけを持つ貴族である5人の内の一人、アルフィスと言う者が宰相として国をまとめ、守ってくれています。彼は私を含めた6人の内、ただ一人の男性なんですよ」
「男性の貴族の方が宰相をなさっているのですか。それならば安心ですね」
リュハネンと言う騎士は私の言葉を聞き、笑顔でそう返した。
何が安心なんだろう?
それはともかく、アルフィスが宰相と言う事になっているのは理由があるのよね。と言うのも誰か架空の役職の人をでっち上げた場合、どこかでボロが出るかもしれない。その点アルフィスは本当に私たち6人の一人だから嘘を言っている訳ではないし、実際に存在するのだからどんな人かと聞かれても返答に窮する事が無い。
それに私たち6人の自キャラの内、彼だけは異形種だから人前に出す事ができないのよね。エルシモさんの話では、この世界の人はモンスターを含む異形種と一緒に住んでいると言うと奇異の目で見られるっぽいから。と言う訳で、この自国で宰相をしている貴族役にはぴったりなのよ。
と言う訳で自キャラ会議の結果こう言う話になり、それをメルヴァとギャリソン、そしてセルニアにも相談してこういう設定で行くことに決めた。ただその結果、アルフィスが城でまるんとあいしゃに「さいしょお」と言うあだ名を付けられて、呼ばれるたびに迷惑そうな、ちょっと困ったような表情を浮かべていると言うのはまた別の話。
「ええ、よくやってくれていると思います」
とにかく当たり障りのない言葉を返して、私も微笑み返しておいた。実際は言葉の意味を理解して居ないのだけど、だからと言って「何が安心なの?」って彼に聞くのも変だしね。
このような会談が始まる前の雑談をしている間に、私たちをこの部屋に迎え入れてくれたメイドたちの手によって全員の前にお茶が配られていく。
それを前にした私は今回もまたあのひたすら甘いお茶かな? と思ったんだけど、一緒に小さな砂糖壷が出されている所を見ると、どうやら今回は自分で好きな量を入れろと言う事みたいね。だけど、なぜこのような形になったのだろう? これは私たちが部屋から出た後、部屋に残っていたお茶を見て殆ど誰も飲んでいなかったからこうしたのかなぁ? そうだとすると私とカロッサさんのあのやり取りの間と言う短い時間で判断をして、この砂糖壷を用意したと言う事よね。
控えの間を用意された時も思ったけど、ここのメイドたちはちゃんと状況を観察し、その情報を元に自分たちで判断して正しい行動が取れていると言う事なのだろう。地方とは言え、やはり貴族のメイドと言うのは誰もがしっかり教育されているのだろうなぁ。
私のところのメイド達は設定でしっかりとしたメイドと言う事になっているだけなので、礼儀作法や所作に関しては遜色ないだろう。だけどこのメイドたちと同じ様に突発的なトラブルに巻き込まれた時、こう言う細かい所に気が付いて自分の判断で正しい行動を取れるのだろうか? ある程度まではできると信じてはいるけど、ここまでのレベルでできるのかと言われるとちょっと自信、ないなぁ。
ホント、うちのメイドたちを教育する為に一人貸してほしいくらいよね。まぁ本当に来たら見られて困るものだらけだし、それはそれで大変な事になりそうだけどね。
さて、お茶を出してもらえたし、この辺りで手土産を出しておくかな。一般的な作法からすると最初に顔をあわせた時に出すべきだったのだろうけど、あの状況では領主がなんか平伏したまま両手だけ出して受け取りそうで、流石に出せなかったからなぁ。あそこで出したらイングウェンザーのアルフィンが持ってきた手土産ではなく、冗談抜きで本当に女神様から頂いた物って感じになっていたと思うしね。
「ギャリソン、あれを」
「はい、アルフィン様」
予め打ち合わせしてあった合図でギャリソンが、この世界ではあまり流通していない黒い光沢のある紙で作られたお菓子箱を出す。それを受け取った私は、笑顔を作ってから対面にいる領主に向かって差し出した。
「どのようなものが喜ばれるか解らなかったもので、私の感性で選んだ物を持ってまいりました。気に入って頂けると宜しいのですが」
「これは?」
私の出した箱を見て不思議そうな顔をする領主。
そうよね、箱だけ渡されても解らないわよね。
「チョコレートです。この国では薬として流通されていると聞いたのですが、私の国ではお菓子としても楽しまれているのですよ」
「チョコレート、ですか。それはまた高価な物を、ありがとうございます」
ただ、自分の中にあるチョコレートとお菓子が結びつかないのだろうか? かなり難しい顔をしている領主。これは食べてもらった方が早いかな?
「折角ですし、一つ御食べになられてはどうですか? 美味しいですよ」
私は紙の箱の蓋を取り、中身が見えるようになった状態にしてから領主に差し出す。その箱の中には料理長が作ったまるで宝石のように美しい、色々な味や形のチョコレートが並んでいた。
■
カロッサ子爵は今とても混乱していた。
「どのようなものが喜ばれるか解らなかったもので、私の感性で選んだ物を持ってまいりました。気に入って頂けると宜しいのですが」
なぜかアルフィン様が、私の前になにやら箱のような物を御出しになられた。これは一体どう言った意味がある行為なのだろうか? もしや神の国では会談の前に相手に何かを渡す風習があると言うのか?
「これは?」
解らない事ばかりだが、アルフィン様を御待たせする訳には行かない。恥は承知の上で御聞きする事にしたのだが、返って来た言葉はこちらの意図するものではなかった。
「チョコレートです。この国では薬として流通されていると聞いたのですが、私の国ではお菓子としても楽しまれているのですよ」
チョコレート? 確か皇帝陛下も摂取なされていると言う、とても高価な食材だと人伝に聞いた事があるが、そのような物をアルフィン様が私に下賜してくださると言うのか? それにチョコレートは不老長寿の薬とも言われていたはずだ。少々眉唾物の話だと今の今までは考えていたが、アルフィン様が御持ちくださったという事はその話も本当の事やも知れんな。他ならぬかの御方が御自ら選ばれたと仰られたのだから。
「チョコレート、ですか。それはまた高価なものを、ありがとうございます」
しかし、このような高価な物を薬ではなく嗜好品に加工しているとは。しかしアルフィン様の国ならば頷ける。それだけの財力があるのはすでに解っていた事だし、何よりこの方は女神様なのだ。人が口にする程度の物が例えどれだけの価値があろうとも、それはあくまで人が勝手に決めたものだ。神々にとっては、殆ど意味がないものだろう。
「折角ですし、一つ御食べになられてはどうですか? 美味しいですよ」
アルフィン様はそう仰られると、御手自ら箱を御開けになられて私に中に入った物を御見せ下さった。そしてその中にあるものを見て私は思わず息を飲む。
美しい。これが菓子だと言うのか。
帝都のパーティーで振舞われているものとは一線を画すその美しい菓子はまるで宝石のように光を反射して光輝き、一つ一つに施された細工は食べ物ではなく、まるで高価な工芸品のように繊細な造りをしている。
蓋を開け、そのままこちらに差し出されたと言う事は何かで刺して口に運ぶのではなく、そのまま手で摘まんで食べると言う事なのだろう。その作法に習い、箱の中の一つに手を伸ばす。
いざ手に取って見はしたものの、かなり苦くまた強い酸味を併せ持って食べにくいものであると聞いていた事があった為にカロッサ子爵は口に入れるのを一瞬躊躇する。しかし、
「遠慮なさらず、どうぞ」
アルフィン姫が笑顔でそう進めてきた為、彼は意を決してそれを口に放り込む。
「ぬっ!?」
苦くて食べにくいなんて話は一体どこから来たものなのだ?
入れた瞬間にトロリと溶けて口の中に広がる香ばしさと甘み。そして後から来る苦味と酸味がその風味を際立たせている。これほどの美味なる菓子は、子爵と言う立場にあるカロッサでも今まで口にした事はなかった。
「これは・・・とても美味しいものですね」
「ええ、チョコレートはそのままでは苦く、酸味も強くとても食べ辛い物なのですが、こうしてお菓子に加工するととても美味しいのですよ」
アルフィン様はそう仰られると、神々しいまでに美しく微笑まれた。
なるほど、これは神の国の加工法なのだな。それならば頷ける。確かにこの菓子からは苦味と酸味が感じられるし、それを押さえて甘みを加える事により、これほどの菓子に変貌させる事ができているようだ。甘み自体は砂糖を加えればよいのだろうが、苦味と酸味を抑えるとなるとそれだけではだめだろう。
人の世界では今まで誰もそれに成功して居ない。少なくとも私は聞いた事がない。だからこそ不老不死の薬と言われているにもかかわらず、その強烈な味ゆえに多くの者が敬遠しているのだ。
「これほど素晴らしい菓子は今までに口にした事はございません。いやはや、流石はアルフィン様の御持ちになられた品だ」
「ありがとう」
送った物を褒められて嬉しそうに微笑むアルフィン様。
その御姿を目にして、カロッサ子爵は考える。これ程の物を下賜して下さったのだ。きっとアルフィン姫には何か思惑があるのだろう。それをこの御方から切り出させるのは不味いのではないか? 下手をすると不況を買ってしまうかも知れないし、彼にとってそれだけは絶対に避けたい事だった。
そこで彼は続けて口を開く。
「これ程の物を下賜して下さると言う事は、何かこの私にやってもらいたい事があるのでしょうか?」
「えっ?」
このカロッサの言葉を聞いたとたん、先程までは花が咲いたかのように優しく微笑まれていたアルフィン様のその表情は驚愕に塗り替えられる。そして彼女は黙り込み、目を伏せてうつむくと、そのままなにやら考え込んでしまわれた。
いかん、私は間違ったのか!?
その表情としぐさに、自分は何か重大な過ちを犯したのではないかと青くなるカロッサ子爵だった。
あとがきのような、言い訳のようなもの
すみません、本当は最後のアルフィンの表情の意味まで書くつもりだったのですが、そうなると結構な量になってとても書きあがらなそうだったのでここで切らせていただきました。これ自体は本来なら引っ張るほどの内容ではないんですけどね。
作中で自国を守っている宰相が男性だと聞き、リュハネンはそれならば安心ですねと返します。これに対してアルフィンが何が安心なのだろう? と疑問に思っていますが、なぜこんな会話になったかと言うとリュハネンがある事を想像したからなんですよ。
名前しか持たない貴族が6人しか居ないと言う事は都市国家イングウェンザーには王族と5つの貴族家があり、その党首だけが名前のみと言う事です。そしてこの場合、その内で唯一人の男性が宰相と言う地位について国を任されていると言う事になります。前にリュハネンはアルフィンの今いる城には女性しか騎士がいないという仮説を立てた事があるのですが、女性だけの国などある訳がありません。子供が生まれませんからね。
そう考えると、その男性は本国にいる男の騎士たちを束ねているのではないか? そしてアルフィンは6人の中の最上位である。とするのならばその貴族は2番目の地位にあると言う事で、普通ならアルフィンがいないこのタイミングで国を奪おうと画策してもおかしくないんですよ。
しかしアルフィンは、それをまったく心配している素振りがない。と言う事はその男性はアルフィンの恋人、または許婚ではないかと考えたのです。それならば無理に国を奪わなくても、いずれ自分の物になりますからね。
因みにアルフィスのあだ名である「さいしょお」はすし屋の大将を子供が発音したようなイントネーションです。例えアルフィスでなくても、顔を合わせるたびに「よっ! さいしょお!」なんて子供たちに言われたら、流石に迷惑顔になるでしょうね。
さて来週ですが、土日出張でなおかつ火曜深夜(というか、もう水曜ですが)までこの話を書くのに時間が掛かってしまっていました。次回の分は当然まだ一行も書いて居ないので流石に日曜日更新はほぼ無理と言う状況になっています。と言う訳で、代休を取っている月曜日に何とか書き上げてアップするつもりなので次回は月曜深夜更新になります。
二週続けてお待たせしてしまいますが、どう御ご容赦ください。